熟塾なにわの食文化を探索 |
なにわ伝統野菜「天王寺蕪」から第二弾「田辺大根」へ
大阪から情報を発信しようと奮闘中の熟塾。食も文化となにわ伝統野菜を美味しく食べることに挑戦。なにわ伝統野菜を食べる第一弾は「天王寺蕪」。塾生仲間である料亭「花外楼」の徳光女将のご協力を得て直営店の北浜のアイルモレ・コタにて、 2004 年 12 月 4 日・好評に付き、 2005 年 11 月 18 日に、天王寺蕪をメインに、フォアグラや鴨肉などと和洋折衷の会席へと大変身の「天王寺蕪」と遭遇。料亭の料理人の腕に見事に変身。まるで町娘から十二単衣を羽織ったお姫様へ大変身したような、磨けば光る大阪の食材・なにわ伝統野菜の醍醐味を堪能!
で、第二弾として、冬野菜の代表のなにわ伝統野菜の「田辺大根」を食材にチョイス。美味しいだけではなく、栄養のバランスを考えた献立を、管理栄養士の尾立先生に「天王寺蕪」に続き依頼したところ、尾立先生がファンだというホテル阪神の「花座」の門料理長に白矢が・・・。田辺大根がどのように変身し、参加者の前に姿を現し口に入るのか!!
期待を胸に、 1 月は 15 日小正月の新年の寿ぎも覚めやらぬ 2006 年の年明けを飾るべく、参加者 62 名は会場へ。一期一会の田辺大根尽くしの料理と向き合った。 ?
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@ 「 田辺大根について 」 |
大阪府立食とみどりの総合技術センター 森下正博 氏 |
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眠れるなにわの伝統野菜を蘇らせた指導者とも言える森下氏。
二十年前から野菜の在来種の研究を進める一方、畑に、小学校にとなにわ伝統野菜を次世代に伝えるべく伝道師のように地元の様々な人々とのネットワークを広げている。
今回は熟塾の講座に講師として登壇。 田辺大根は、摂津東成群田辺地区(現 大阪市東住吉区 )の原産である白首の大根で、ルーツは白あがり京大根とねずみ大根と交雑後代が田辺地区に土着したのではないかとされている。
明治時代の田辺大根は短根で、縦横がほぼ同長のものであったが、次第に長型に淘汰改良された。根部は白色の円筒形で、末端が少し膨大し、丸みを帯び、長さ20 cm 、太さが9 cm ほどで、葉には毛じという表面に生える細い毛がない。肉質は緻密、柔軟で甘味に富み主に煮食用で甘漬けにも適し、ふろふきにすれば蕪のようにとろけるほど柔らかい。
昭和25年頃に発生したウィルス病のため畑から姿を消したが、昭和62年の 大阪市 農産物品評会で森下氏が田辺大根の品種を偶然発見。出品者の岡田清氏から種子を譲りうけて以来、大阪府立食とみどりの総合技術センターで栽培を行い種子を増やし、 大阪市 や、 河南町 、 和泉市 の農家や幼稚園・小学校などの菜園での栽培が復活した。
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A 「 地元・田辺の取組みについて 」 |
田辺大根ふやしたろう会 世話人 吉村直樹 氏 |
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白髪交じりのヒゲが印象的な風貌の吉村さんは実はラジオ大阪記者で田辺出身者。地元の歴史探訪に取組み終戦60年の 2005 年「7・ 26 田辺の模擬原爆追悼の集い」の実行委員として広島・長崎の原爆に続く、田辺に落とされた模擬原爆を通し戦争について地元の人々と共に考え、職場で取り組んだ、太平洋戦争末期、大阪大空襲で大怪我を負った人々が60年たった今でも苦しみ続ける現状を追ったドキュメンタリーラジオ大阪の番組制作「終戦60年特別番組 足が生えてこなかった」が平成 17 年日本放送文化大賞近畿地区代表作品・日本民間放送連盟賞ラジオ報道番組部門最優秀賞受賞・第 60 回記念文化庁芸術祭ラジオ部門で芸術祭優秀賞を受賞。
地元の戦争史はもちろん、幻の田辺大根の里帰りの為、大阪府立農林技術センターで森下正博氏が品種保持の為栽培していると聞きつけ種をもらい受け、「田辺大根ふやしろう会」を有志で発足し実現した。 地元の小学校での栽培や、お米の空き袋などのビニール袋での栽培法も広めた。地元の人々が栽培した大根を地元の商店街に持ち寄り、品評会や大鍋で大根炊きをするイベントにも取り組んでいる。今回の料理に使用された大根を畑から調達。田辺大根が料理人の腕でどのような料理になるかを楽しみにしているとの発言。
■食後の感想文■
「いつもカジュアル着しか着たことがなかったぼく(田辺大根)をきょうはこんなにセレブな装いをさせてもらって、料理長さんありがとう。ぼくがこんなに変身して、どんなシュティエーションでも対応できることを実証してもらいました。これからも大阪の味の一つとして活躍させてください。」
と料理から聞き取った田辺大根君の言葉を代弁。 ? ?
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B 「 田辺大根の献立 」
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管理栄養士 尾立純子 さん |
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熟塾としては、 2000 年 8 月・終戦55年目の夏に、熟塾初の主催イベント夢千代日記の脚本家早坂暁氏の講演と広島の原爆をテーマにした桃井かおりさんと間寛平さん出演の映画『夏少女』上映会の為に取り組み、動員に苦慮している時に思いついたのが、亡父が夏になるとつぶやいていた芋のつる。戦後の食料難の時代の再現では芋とつるがメインディッシュの『終戦弁当』の献立を御願いしたのがご縁の管理栄養士尾立先生。
なにわ伝統野菜をただ美味しいだけではなく栄養バランスのよい天王寺蕪の献立をと御願いした『天王寺蕪』に続く『田辺大根』。
1 日の食事バランスは 5 つの区分
@主食:ごはん(中盛り)だったら4杯程度 A副菜:野菜料理 5 皿程度 B主菜:肉・魚・卵・大豆料理から 3 皿程度 C牛乳・乳製品:牛乳だったら 1 本程度 D果物:みかんだったら 2 個程度 を心がけてのアドバイス。
今回の献立は、魚と黒豚のタンパク質に葉っぱも活用できるよう献立に組込んだ。門料理長の追っかけでもある尾立先生がラフな献立を提案したが、料理長の磨かれたセンスで見事な献立に。今日は楽しみにしながら参加させていただいた。
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