恒例の新春文楽鑑賞会・今年は"花競四季の寿""ひばり山姫捨松""夕霧・伊左衛門 曲輪文章"を鑑賞後、4月に桐竹勘十郎襲名を控えた人形遣い吉田簔太郎氏からお話を聞く機会を得た。長年人形に華を持たせる黒子に徹し、自分の道をしっかりと歩いてこられた成果が、三世桐竹勘十郎襲名に結実。お父様と共に初めて舞台を踏んだ思い出の「絵本太功記」が襲名披露狂言の演目となった。実際の舞台には、お父様の姿はないけれども、瞼の裏に焼きついているお父様の後姿にこそ芸の伝承があるのだろう。
また、幼い頃に漫画家になりたかったという簔太郎氏は、昭和59年から国立文楽劇場の観劇記念スタンプの原画を描き続けている。スタンプの中の人形たちは素晴らしく生き生きと描かれているが、そこにはデザイン性だけではない、幼いころから共に生きてきた人形への深い愛情が感じられる。更に、子供たちのワークショップや出張公演には労を惜しまない、一人でも多くの人に文楽と出会ってほしい。舞台を支えるスタッフはもとより、会場に詰め掛けるお客様があってこそ文楽も生きていくという姿勢に、共感者は多い。
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